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Lourdes  ルルドのまち
 ホテルのロビーは客でいっぱいだった。
どういうわけか、年配の女性が多く、そのほとんどが団体客のようだった。
何人かは胸に札を付けていて、アイルランド カトリック協会だとかエジプトキリスト教徒なんとか、といったように所属している団体や国名 が書かれているものもあり、いろいろな国のひとたちがグループで来ているのがわかる。
 年輪を重ねた女性たちはどこか、魔法使いのおばあさん、を思わせた。
今夜、このホテルで魔女の集会がある、といっても不思議な感じがしないくらいだ。
マクベスが元気だったころ、魔女は嵐の中でヒースの丘に集まるのが普通だったが、時代とともに彼女たちの習慣も変わったのだろう。
ホテルの裏手にある駐車場には、ほうきが並んでいるかもしれない。
骨董品のようなエレベーターでスーツケースを運び上げ、殺風景な部屋に入ると、昼間の暑気がこもっていてむっとするにおいがした。
部屋にはバルコニーウィンドーがふたつあった。
開けると下の通りから雑踏の騒音が上がってきた。
通りの向かいは教会で、目の前が鐘楼だった。
その鐘楼の尖塔に、大きな、ちょっと欠けてはいるが丸い月が突き刺さっていた。
陽が落ちて気温が下がり、そよ風が肌に心地よかった。
何をみてるの、と妻がいった。
ほうきに乗ったバアさんが空を飛んでないかと思って。
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